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キノ・イグルー 有坂さんによる

「バベットの晩餐会」​紹介ページは

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凍てつく寒さの厳しい冬を過ごす海岸沿いの小さな村。一瞬で過ぎ去って行く夏の太陽。

彩りの少ない背景、シンプルに進んでいくストーリーは最後を味わうために作られていた。

二つのスープが織りなす人間模様とだんだんと色づいていく物語を味わっていきたい。

 

一つは、重苦しい灰色の空と湿った草原、冷たい海に囲まれるどこか寂しさを感じる風景を、

ぜんぶ混ぜこぜにして作ったようなスープ。

干したカレイとビールと硬くなったパンをふやかして作ったもの。

黒くてどろっとした質感のスープは美味しさというよりも空腹を満たしながらも消化にいい、

村人たちが食べなれた味ではないか?とも思った。

 

もう一つは、夢にまで見たウミガメのスープ。

ウミガメのスープなんてさすがはフランス料理!と思ってしまうシーン。

でも歴史を辿ってみると、もともとは大航海時代のイギリス料理とされています。

長い船旅で食料を保存するのは難しい中、重宝されたのが生きたまま持ち運べる保存食、

加工をされていない唯一の肉がウミガメだったというわけです。

 

バベットが晩餐会のために持ち込んだのは、そんな生きたウミガメでした。

姉のマーチーネはウミガメが火あぶりにされる夢を見て、天罰が下ると怯えてしまいます。

そんな彼女の姿から村人達は『決して晩餐会では食事を味わうことはせず、

食事の話も一切しない』と誓い合うのです。

 

晩餐会がはじまり、まず最初に出てきた料理がウミガメのスープでした。

フランス料理に慣れている客人ローレンスは『これこそ本物のウミガメのスープ』と言い、

恐る恐るスープを口に運び『考えないように、味合わないように』とする村人たちの表情。

コース料理が進むにつれてだんだんと村人達の心が解れて打ち解けあっていくのが微笑ましい。

 

ハレとケのスープ。

 

重苦しい灰色の空と冷たい海を混ぜたようなスープとバベットが持ち込んだ

美味しさという彩りによって生まれたスープ。

 

今回は、そんなウミガメのスープを作りたいところですが、

流石に食材として手に入れることは難しいので、偽ウミガメスープを作ることにしました。

ウミガメは高級食材!ということで本物のウミガメスープが食べられたのは

貴族などの上流階級の人々でした。そんな中生まれたのが偽ウミガメスープでした。

ミガメの代わりに牛の頭を使ってつくるスープが流行り、

一般市民でも味わえるようになったと言われています。

 

映画に出てくるのは、コンソメスープのような透きとおっているものですが、

今回のレシピはイギリスの偽ウミガメスープに寄せて、

とろみのあるスパイシーな味わいに仕上げました。

本来はバターと小麦粉を使ってとろみをつけるのですが、

このレシピでは、煮込んだ玉ねぎのピューレと出汁を合わせてとろみをつけました。

トーストしたフランスパンをスープに染み込ませて食べることで、2つの味わいを楽しめます。

​(文・さわのめぐみ)