【ハミング、スープ】ザ・ローリング・ストーンズ/ 山羊の頭のスープ

更新日:9月15日

ロックンロール史上最も有名なスープといえば、

勿論それは”山羊の頭のスープ”。


いうまでもなく、ザ・ローリング・ストーンズが1973年に発表した

アルバム・タイトルのことである。

ザ・ローリング・ストーンズ『山羊の頭のスープ』(ユニバーサル ミュージック)

ポップ・ミュージックの歴史を振り返っても、

そのネーミングと字面において、

『山羊の頭のスープ』ほど強烈なインパクトを放っている作品もなかなかないだろう。




で、そんなスープ、本当にあるの?




このタイトルを目耳にしたとき、恐らく誰もが一度はそう思ったのでないだろうか。

答えは、イエス。これは実在する料理だ。


“山羊の頭のスープ(Goat Head Soup)”は、主にジャマイカで親しまれている伝統料理。

クリスマスやパーティ、祝いの席でも振舞われるカリブ地域の名物料理で、

現地では“マニッシュ・ウォーター( Manish Water)”とも呼ばれているという。


主な材料は、山羊の頭部、内臓、

そして雄山羊の睾丸。

マニッシュ・ウォーターという呼称は、

どうやらこの睾丸に由来しているらしい。

要は日本でいうところの、スッポンとか

ウナギみたいな位置づけなのだろうか。


上記の材料を野菜とともに1〜2時間ほど

煮込み、各家庭の味づけを施したところで、

スープは完成。



当然、鍋の中には山羊の頭部がドーンと入っているわけだが、

頭部だけに肉付きはさほどなく、食べられる部分も少ないようだ。

恐らく頭部は出汁取りの役割なのだろう。


さて、そうなると改めて気になってくるのが

「ストーンズはなぜそんなタイトルを作品に付けたのか?」ということ。


そこでまず足掛かりとなるのが、『山羊の頭のスープ』の制作現場だ。

ストーンズがこのアルバムをレコーディングした場所は、

ジャマイカのキングストンにあるダイナミック・サウンド・スタジオ。

前作『メイン・ストリートのならず者』で

ストーンズ流ロックンロールの完成形を見た彼らは、

ここで新境地を開拓すべく、環境を変えてニュー・アルバムの制作に臨んだのだ。

もちろん、そこには欧米の喧騒から離れて制作に集中したいという思いもあっただろうが、ここで重要なのは、その場所がジャマイカだったということだろう。


ボブ・マーリーに象徴されるように、

この当時はジャマイカン・レゲエが世界中で注目されていた頃。

欧米の音楽家たちがジャマイカ音楽への関心を高めていて、

それはストーンズも例外ではなかった。

音楽的な新機軸を探していた彼らは、そのヒントをジャマイカという地域に求めたのだ。


ところが、実際に『山羊の頭のスープ』を聴いてみると、ジャマイカン・レゲエ的な要素はあまり見当たらない。

当時はこれに肩透かしを感じた人も少なくなかったようで、この作品はセールス的には成功を収めるも、内容については厳しい評価を下す人も多かったようだ。


アルバム・タイトルからは、ジャマイカが作風にもたらした影響を

暗に示しているようなニュアンスも感じるが、

実際に彼らがレゲエの要素を本格的に取り入れるのは、このあとのこと。

そういう意味で、『山羊の頭のスープ』は

ストーンズの過渡期を捉えた作品ともいえるだろう。



しかし、ここはリリースから50年が経過しようとしている今こそ強調しよう。

『山羊の頭のスープ』は、最高のレコードだ。

少なくとも僕はストーンズの錚々たるディスコグラフィの中でも、

このアルバムはかなり上位に入る作品だと思っているし、

全編に漂う仄暗いムードと、ストーンズらしい野性味溢れる演奏が相まった今作の音は、

このアルバム・タイトルにも合っている気がするのだ。



「悲しみのアンジー」などの美しいバラッドも収録されており、

このタイトルの割には意外と親しみやすい曲も多いので、

これからザ・ローリング・ストーンズを聴き始める人にも積極的にオススメしたい作品だ。



『山羊の頭のスープ』、この秋の夜長に是非ご賞味ください。


(文・渡辺裕也)


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