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Season.2【旅と世界とスープ】中国・雲南の旅から創造した一皿

更新日:2023年7月27日

今月から、旅する料理家・細川亜衣さんによる「旅と世界とスープ」の連載が始まります。

過去にも「トレンド、スープ」にてご出演いただきましたが、念願の連載企画となります。

細川さんの旅の記憶とそこで出会った料理について綴っていきます。



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★旅の記憶

雲南省・西双版納(シーサンパンナ)を旅した時にとある村の食堂で出会った”ツリートマトのたれ”。

木になるトマトによく似た果実”ツリートマト”を炭火でこんがりと炙り、

皮を剥き、にんにくや生の唐辛子とともに乳鉢でつぶして、魚醤で味つけをします。

“このたれでゆでた破竹や太く切ったきゅうりを食べる”のです。

淡い風味の野菜や山菜が、ツリートマトの炙った香りや唐辛子の鮮烈な辛味、魚醤の旨味と相まって、忘れられない味となりました。

その後、茶の木の古樹との出会いを求め、山に入った時にツリートマトの木を目にしました。茶山の入り口の村の、民家の裏に聳える一本の木。ひょろりとした枝に小さな赤い実がぽつり、ぽつりとなっています。




その存在が気になって、居てもたってもいられず調べてみました。”ツリートマト”は”タマリロ”と呼ばれる亜熱帯地方で栽培される常緑樹の果実。日本でもわずかですが栽培されているようです。とはいえ、簡単に手に入るものではありません。


あの味、あの香りを再現するには?と考えてみます。浮かんできたのは炙ったトマトと赤パプリカが混じり合ったような味わいでした。

さっそく試してみます。

思っていた通り、どこかツリートマトを連想させる味わいになりました。


本来のたれは場合は炙ったツリートマトだけで作りますが、夏らしいスープに仕立てるために、湯むきしたプチトマトや赤玉ねぎを加え、生野菜の軽やかさと心地よい食感を出すようにしました。


野菜のおいしさが一番伝わるのは人肌ですが、うだるように熱い日にはしっかり冷やすのもいいものです。あるいは、鍋や麺のたれのほか、とうふや卵料理、焼いた肉や魚、炙り野菜など、その他さまざまな料理のアクセントにも大活躍します。


夏の間に何度も食べたくなる、”ツリートマトへのオマージュ・スープ”。


ぜひ繰り返し作ってみてください。


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★記憶のレシピ

「ツリートマトへのオマージュ・スープ」



〈材料〉※約4人分
・トマト(完熟で甘みの強いもの) 中4個(約600g)
・赤パプリカ 1個(炙る分) + 1/4個(生で刻む分)
・プチトマト 20個
・赤玉ねぎ 中1/4個(約40g)           
・生赤唐辛子 1本

(仕上げ)
・香菜 ひとつかみ
・魚醤 適量
・酢 適量
・塩 適量

〈作り方〉

①トマトの半量、赤パプリカ(1個)はへたをのぞき、焼き網にのせて強火で炙る。

②トマトは全体が焦げるまで、赤パプリカは全体が真っ黒になるまでしっかりと焼いたら、網からおろして完全に冷めるまでおく。

③トマト、パプリカとも粗熱が取れたら皮をむき、パプリカは種を取ったら、乳鉢でつぶすか、包丁で刻み、ボウルに入れる。

④プチトマトはへたを取り、熱湯に一瞬つけたらすぐに冷水に取って皮をむく。

⑤赤玉ねぎは小さなさいの目に刻み、赤玉ねぎは冷水にさらして水気を切る。

⑥炙り野菜のボウルに細かく刻んだ生赤唐辛子、赤玉ねぎを加えて合わせる。

魚醤、酢、塩でほどよい味をつけ、供する前にプチトマトと香菜を粗く刻んで加え、

軽くあえる。塩味をととのえて、うつわに盛る。完成。



〈ポイント〉

★②のパプリカは果肉まで火が通り甘味が出るようにしっかりと焼き、

トマトは焼き汁が出過ぎない程度に焼きましょう。


★唐辛子と魚醤を効かせて、メリハリのある味つけにします。



(文とレシピ・細川亜衣)














次回は、2023年11月を予定しております。お楽しみに!

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